のお母《ふくろ》の病気も追々全快になると云う事で宜《よ》いの」
千「はい、御当家《こなた》さまのお蔭で人参を飲みましたせいか、段々宜しくなりまして、此の程|病褥《とこ》を離れましたと丹治がまいっての話でございますが、母が申しますに、其方《そち》のような行届《ゆきとゞ》きません者を置いて下さるのみならず、お目を掛けて下さいまして、誠に有難いことで、種々《いろ/\》戴き物をしたから宜しく申上げてくれと申しました」
長「感心だな、お前は出が宜《い》いと云うが………千代/\千代」
千「はい」
長「どうも何《なん》だね、お前は十九かえ」
千「はい」
長「ま一盃|酌《つ》いで呉んな」
千「お酌《しゃく》を致しましょう」
長「半分残してはいかんな、何うだ一盃飲まんか」
千「いえ、私《わたくし》は些《ちっ》とも飲めません、少し我慢して戴きますと、顔が青くなって身体が震えます」
長「その震える処がちょいと宜しいて、私《わし》は酔いますよ、お前は色が白いばかりでなく、頬の辺《へん》眼の縁《ふち》がぼうと紅いのう」
千「はい、少し逆上《のぼ》せて居りますから」
長「いや逆上《のぼせ》ではない、平常《ふだん》
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