た、何を遊ばしますの、私《わたくし》は間が悪うございますもの……」
 大藏は四辺《あたり》を見て油断を見透《みすか》し、片足|挙《あ》げてポーンと雪洞を蹴上《けあ》げましたから転がって、灯火《あかり》の消えるのを合図にお菊の胸倉を捉《と》って懐に匿《かく》し持ったる合口《あいくち》を抜く手も見せず、喉笛へプツリーと力に任せて突込《つきこ》む。
菊「キャー」
 と叫びながら合口の柄《つか》を右の手で押え片手で大藏の左の手を押えに掛りまするのを、力に任せて捻倒《ねじたお》し、乗掛って、
大「ウヽー」
 と抉《こじ》ったから、
菊「ウーン」
 パタリとそれなり息は絶えてしまい、大藏は血《のり》だらけになりました手をお菊の衣類《きもの》で拭きながら、密《そっ》と庭伝いに来まして、三尺の締《しまり》のある所を開けて、密っと廻って林藏という若党のいる部屋へまいりました。

        二十二

大「林藏や、林藏寝たか林藏……」
林「誰だえ」
大「己だ、一寸《ちょっと》開けてくれ」
林「誰だ」
大「己だ、開けてくれ、己だ」
林「いやー旦那さまア」
大「これ/\」
林「何うして此様《こん》な処へ」
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