出ましたが、あの花壇の菊は余程咲いたかの」
菊「余程咲きました、咲乱れて居ります」
大「一寸《ちょっと》見たいもんだの」
菊「じゃアお雪洞《ぼんぼり》を点《つ》けましょう」
大「然《そ》うしてくれ」
菊「お路地のお草履《ぞうり》は此処《これ》にあります、飛石《とびいし》へお躓《つまず》き遊ばすと危《あぶの》うございますよ」
大「おゝ宜《よ》い/\/\」
と蹌《よろ》けながらぶらり/\行《ゆ》くのを、危いからお菊も後《あと》から雪洞を提げて外の方へ出ると花壇があります。此の裏手はずっと崖になって、下《くだ》ると谷中|新幡随院《しんばんずいいん》の墓場|此方《こちら》はお馬場口になって居りますから、人の往来《ゆきゝ》は有りません。
大「菊々」
菊「はい」
大「其処《そこ》へ雪洞を置けよ」
菊「はい置きます」
大「灯火《あかり》があっては間が悪いのう」
菊「何を御意あそばします」
大「これ菊、少し蹲《しゃが》んでくれ」
菊「はい」
左の手を出して……お母《ふくろ》が二歳《ふたつ》三歳《みッつ》の子供を愛するようにお菊の肩の処へ手をかけて、お菊の顔を視詰《みつ》めて居りますから、
菊「あな
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