遣《や》りましたが、彼《あれ》には余り酒を遣《つかわ》されますといけませんから、加減をしてお遣《つかわ》し下さいまし」
大「ウム左様か、何か肴の土産を持って参ったか」
菊「はい、種々《いろ/\》頂戴致しましたが、私《わたくし》は宜《よ》いからお前持って往《ゆ》くが宜い、折角下すったのだからと申して皆|彼《あれ》に遣《つかわ》しました」
大「あゝ然《そ》うか、あゝー好《よ》い心持だ、何処《どこ》で酒を飲むより宅へ帰って気儘に座を崩して、菊の酌で一盃飲むのが一番旨いのう」
菊「貴方また其様《そん》な御容子《ごようす》の好《よ》いことばかり御意遊ばします、私《わたくし》のような此様《こん》なはしたない者がお酌をしては、御酒《ごしゅ》もお旨くなかろうかと存じます」
大「いや/\どうも実に旨い、はアー……だがの、菊、酔って云うのではないが表向《おもてむき》、ま手前は小間使《こまづかい》の奉公に来た時から、器量と云い、物の云い様《よう》裾捌《すそさば》き、他々《ほか/\》の奉公人と違い、自然に備わる品《ひん》というものは別だ、実に物堅い屋敷にいながら、仮令《たとい》己が昇進して、身に余る大禄を頂戴
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