ておくれ、お前のような薄穢《うすぎたな》い者の女房《にょうぼう》に誰がなるものか」
林「薄穢けりアそれで宜《え》えよ、本当に呆れて物が云われねえ、忌《いや》なら何も無理《もり》に女房になれとは云わねえ、私《わし》の身代が立派《れっぱ》になれば、お前さんよりもっと立派《れっぱ》な女房《にょうぼ》を貰うから、否《えや》なら否《えや》で分ってるのに、突然《いきなり》烟管で殴《にや》すてえことがあるか、頭へ傷《けず》が附いたぞ」
菊「打《ぶ》ったって当然《あたりまえ》だ、さっさと部屋へおいで、旦那さまがお帰りになったら申上げるから」
林「旦那様がお帰りになりア此方《こっち》で云うて暇《ひま》ア出させるぞ」
菊「おや、何で私が……」
林「何も屎《こそ》も要《え》らねえ、さっさと暇ア出させるように私《わし》が云うから、然《そ》う思って居るが宜《え》え」
 と云い放って立上る袖を捕《とら》えて引止め、
菊「何ういう理由《わけ》で、まお待《まち》よ」
林「何だね袂《たもと》を押えて何うするだ」
菊「私が何でお暇《いとま》が出るんだえ、お暇が出るといえば其の理由《わけ》を聞きましょう」
林「エヽイ、聞《
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