け》くも聞《け》かねえも要《え》らねえ、放さねえかよ、これ放さねえかてえにあれ着物《けもの》が裂けてしまうじゃアねえか、裂けるよ、放さねえか、放しやがれ」
 と林藏はプップと腹を立って庭の方へ出る途端に、チョン/\チョン/\、
○「四ツでござアい」
 と云う廻りの声を合図に、松蔭大藏は裏手の花壇の方から密《そっ》と抜足《ぬきあし》をいたし、此方《こちら》へまいるに出会いました。
大「林藏じゃアねえか」
林「おや旦那様」
大「林藏出て来ちゃアいかんなア」
林「いかんたって私《わし》には居《え》られませんよ、旦那様、頭へ疵《けず》が出来《でけ》ました、こんなに殴《にや》して何うにも斯うにも、其様《そん》な薄穢い田舎者《えなかもの》は否《えや》だよッて、突然《いきなり》烟管で殴しました」
大「ウフヽヽヽ菊が……菊が立腹して、ウフヽヽヽ打《う》ったか、それで手前腹を立てゝ出て来たのか」
林「ヒエ左様でござえます」
大「ウム至極|尤《もっと》もだ、少しの間己が呼ぶまで来るな、併《しか》し菊もまだ年がいかないから、死んでも否《いや》だと一度《ひとたび》断るは女子《おなご》の情《じょう》だ、ま部屋に
前へ 次へ
全470ページ中169ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング