ござえます、斯《こ》んな忌《えや》な人の女房にはなりませんと云切《いいき》ったら何う致します」
大「然《そ》うは云わせん、深夜に及んで男女《なんにょ》差向いで居《お》れば、不義でないと云わせん強《た》って強情を張れば表向にいたすが何うだ、それとも内聞に致せば命は助けて遣るといえば、命が欲しいから女房になりますと云うだろう」
林「成程、これは恐入《おそれえ》りましたな、成程承知しなければ斬ってしまうか、命《えのち》が惜しいから、そんなればか、どうも是は面白い」
大「これ/\浮《うか》れて手を叩くな、下から下婢《おんな》が来る」
林「ヒエ有難い事で、成程やります」
大「宜《よ》いか、其の積りでいろ」
林「ヒエ、そろ/\帰りましょうか」
大「そんなに急《せか》なくっても宜《い》い」
林「ヒエ有難い事で」
と是からそこ/\に致して、余った下物《さかな》を折に入れて、松蔭大藏は神原の小屋へ参り、此方《こちら》は宜《よ》い心持に折を吊《ぶら》さげて自分の部屋へ帰ってまいりまして、にこ/\しながら、
林「えゝい、人間《ねんげん》は何処《どこ》で何う運《おん》が来《こ》るか分らねえもんだな、畜生|彼
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