着いてゝ宜《よ》い、大切な物を扱うに真実で粗相がないから宜いと、大層作左衞門は目をかけて使いました。此の作左衞門の忰《せがれ》は長助《ちょうすけ》と申して三十一歳になり、一旦女房を貰いましたが、三年|前《ぜん》に少し仔細有って離別いたし、独身《ひとりみ》で居ります所が、お千代は何うも器量が好《よ》いので心底《しんそこ》から惚れぬきまして真実にやれこれ優しく取做《とりな》して、
長「あれを買ってお遣《や》んなさい、見苦しいから彼《あ》の着物を取換えて、帯を買ってやったら宜かろう」
などと勧めますと、作左衞門も一人子《ひとりっこ》の申すことですから、其の通りにして、お千代/\と親子共に可愛がられお千代は誠に仕合せで丁度七月のことで、暑い盛りに本山寺《ほんざんじ》という寺に説法が有りまして、親父《おやじ》が聴きに参りました後《あと》で、奥の離れた八畳の座敷へ酒肴《さけさかな》を取り寄せ、親父の留守を幸い、鬼の居ないうちに洗濯で、長助が、
長「千代や/\、千代」
と呼びますから、
千「はい若殿様、お呼び遊ばしましたか」
長「一寸《ちょっと》来い、/\、今|一盃《いっぱい》やろうと云うんだ、
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