か》いでは酒を飲まねえと思いやすよ」
大「それは飲むまい、私《わたし》は酒を飲まんからお部屋へ往って飲めというだろうから、もし然《そ》う云ったら、旦那様が此処《こゝ》で飲めと仰しゃったのを戴きませんでは、折角のお志を無にするようなものだから、私《わし》は頂戴いたしますと云って、茶の間の菊がいる側の戸棚の下の方を開けると、酒の道具が入っているから、出して小さな徳利《とくり》へ酒を入れて燗を附け、戸棚に種々《いろ/\》な食物《たべもの》がある、※[#「魚+獵のつくり」、第4水準2−93−92]《からすみ》又は雲丹《うに》のようなものもあるから、悉皆《みんな》出してずん/\と飲んで、菊が止めても肯《き》くな、然うして無理に菊に合《あい》をしてくれろと云えば、仮令《たとえ》否《いや》でも一盃ぐらいは合をするだろう、飲んだら手前酔った紛《まぎ》れに、私《わし》は身を固める事がある、私《わし》は近日の内|商人《あきんど》に成るが、独身《ひとりみ》では不自由だから、女房になってくれるかと手か何か押えて見ろ」
林「ひえへゝゝ是はどうも面白《おもしろ》え、やりたいようだが、何分間が悪うて側へ寄附《よりつ
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