ければならん、是は当然だ、手前の処へ幾ら往《い》きたいと思っても然《そ》ういうに極って居《お》るわ」

        二十

 林藏はにこ/\いたしまして、
林「成程むゝう」
大「だから、手前さえ宜《よ》いと極《きま》れば、直接《じか》に掛合って見ろい、菊に」
林「是は云えません、間《ま》が悪うてとてもはや冗談は云えませんな然《そ》うして中々ちま/\[#「ちま/\」に傍点]としてえて、堅《かて》え気性でござえますから、冗談は云えましねえよ、旦那様がお留主《るす》の時などは、とっともう苦《ねが》え顔をして居なせえまして、うっかり冗談も云えませんよ」
大「云えない事があるものか、じゃア云える工夫をしてやろう、こゝで余った肴を折へ詰めて先へ帰れ、己は神原の小屋に用があるから、手前先へ帰って、旦那さまは神原さまのお小屋で御酒《ごしゅ》が始まって、私《わし》だけ先へ帰りました、これはお土産《みやげ》でございますと云って、折を出して、菊と二人で一盃《いっぱい》飲めと旦那さまが仰しゃったから、一盃頂戴と斯う云え」
林「成程どうも…併《しか》しお菊《けく》さんは私《わし》二人《ほたり》で差向《さしも
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