くれる所の気象を看抜《みぬ》いているから、己は貴様と親類になりたいと思うが、何うだ」
林「ヒエ/\恐入《おそれえ》ります、勿体至極も……」
大「いや、然《そ》うでない、只|主《しゅう》家来で居ちゃアいかん、己は百石頂戴致す身の上だから、己が生家《さと》になって貴様を一人前の侍に取立ってやろう、仮令《たとえ》当家の内でなくとも、他《た》の藩中でも或《あるい》は御家人|旗下《はたもと》のような処へでも養子に遣《や》って、一廉《ひとかど》の武士に成れば、貴様も己に向って前々《まえ/\》御高恩を得たから申上ぐるが、それはお宜しくない、斯うなすったら宜かろうと云えるような武士に取立って、多分の持参は附けられんが、相当の支度をしてやるが、何うだ侍になる気はないか」
林「いや、是はどうも勿体ない事でござえます、是はどうもはや、私《わし》の様な者は迚《とて》もはや武士《ぼし》には成れません」
大「そりゃア何ういう訳か」
林「第一《でいいち》剣術《きんじつ》を知りませんから武士《ぼし》にはなれましねえ」
大「剣術《けんじゅつ》を知らんでも、文字を心得んでも立派な身分に成れば、それだけの家来を使って、それ
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