いう志なら、また其の様に目を懸けてやるがのう」
林「ヒエ実《じつ》に国《こに》というたところで、今《えま》になって帰りましたところが、親戚《めより》もなし、別《びつ》に何う仕ようという目途《みあて》もないものですから願わくば此の繁盛《さか》る御府内でまア生涯|朽果《こちはて》れば、甘《おま》え物を喰《た》べ、面白《おもしろ》え物を見て暮しますだけ人間《ねんげん》の徳だと思えやす、実《ぜつ》に旦那さまア御当地《こちら》で朽果《こちは》てたい心は充分《えっぱい》あります」
大「それは宜しい、それじゃア何うだえ己は親戚《みより》頼り兄弟も何も無い、誠に心細い身の上だが、まア幸い重役の引立を以て、不相応な大禄を取るようになって、誠に辱《かたじ》けないが、人は出世をして歓楽の極《きわ》まる時は憂いの端緒《いとぐち》で、何か間違いのあった時には、それ/″\力になる者がなければならない、己が増長をして何か心得違いのあった時には異見を云ってくれる者が無ければならん、乃《そこ》で中々家来という者は主従の隔てがあって、どうも主人の意《こゝろ》に背いて意見をする勇気のないものだが、貴様は何でもずか/\云って
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