もの》を致します)をさせて置きたくない、貴様にはこれ/\手当をして遣《や》ろうという真実に絆《ほだ》されて、表向ではないが、内々《ない/\》大藏に身を任して居ります。是は本当に惚れた訳でもなし、金ずくでもなし、変な義理になったので、大藏も好男子《いゝおとこ》でありますが、此の菊は至って堅い性質ゆえ、常々神原や山路が来ては何か大藏と話をしては帰るのを、案じられたものだと苦にしていたのが顔に出ます。今大藏が衝立の蔭に菊のいたのを認めて恟《びっく》り致したが、さあらぬ体《てい》にて、
大「源兵衞、少し待ちな」
 と連戻って、庭口から飴屋を送り出そうとすると、林藏という若党が同じく立って聞いていましたので、再び驚いたが、仕方がないと思い、飴屋を帰してしまったが、大藏は腹の中《うち》で菊は船上忠助の妹《いもと》だから、此の事を渡邊に内通をされてはならん、船上は古く渡邊に仕えた家来で、彼奴《あいつ》の妹だから、こりゃア油断がならん、なれども林藏は愚者《おろかもの》だから、林藏から先へ当って調べてみよう。と是から支度を仕替えて、羽織大小で彼《か》の林藏という若党を連れ、買物に出ると云って屋敷を立出《
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