渡邊に打明けていう訳にはいかずと、云えば直《すぐ》に殺されるか、刺違えて死兼《しにかね》ぬ忠義|無類《むるい》の極《ごく》頑固《かたくな》な老爺《おやじ》でございますから、これを亡《な》いものにせんけりアなりません。

        十八

 老女も中々の才物ではございますが、女だけに遂に大藏の弁舌に説附《ときつ》けられました。此の説附けました事は猥褻《わいせつ》に渉《わた》りますから、唯説附けたと致して置《おき》ましょう。扨《さ》て此の一味の者がいよ/\毒殺という事に決しまして、毒薬調合の工夫は有るまいかと考えて居りますと御案内の通り明和の三年は関東洪水でございまして、四年には山陽道に大水が出て、二年洪水が続き、何処《どこ》となく湿気ますので、季候が不順のところから、流行感冐《はやりかぜ》インフルエンザと申すような悪い病が流行《はや》って、人が大層死にましたところが、お扣《ひかえ》の前次様も矢張流行感冐に罹《かゝ》られました処、段々重くなるので、お医者方が種々《いろ/\》心配して居りますが、勇気のお方ゆえ我慢をなすって押しておいでので[#「おいでなので」の誤記か]いけません、風邪を
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