し、彼を抱込めば宜《よ》いと寺島兵庫と申す重役が、松蔭大藏を抱込むと、松蔭は得たりと請合って、
大「十分事を仕遂《しおお》せました時には、どうか拙者にこれ/\の望《のぞみ》がございますが、お叶《かな》え下さいますか」
寺「委細承知致した、然《しか》らば血判を」
大「宜しい」
と是から血を出し、我《わが》姓名の下へ捺《お》すとは痛《ひど》い事をしたもので、ちょいと切って、えゝと捺《や》るので、忌《いや》な事であります。只今は血を見る事をお嫌いなさるが、其の頃は動《やゝ》ともすれば血判だの、迚《とて》も立行《たちゆき》が出来んから切腹致すの、武士道が相立たん自殺致すなどと申したもので、寺島松蔭|等《ら》の反逆も悉皆《すっぱり》下組《したぐみ》の相談が出来て、明和の四年に相成りました。其の年の秋までに謀策《たくみ》を仕遂《しおお》せるのに一番むずかしいものは、浮舟《うきふね》という老女で年は五十四で、男優《おとこまさ》りの尋常《ひとゝおり》ならんものが属《つ》いて居ります。此者《これ》を手に入れんければなりません。此者と物堅い渡邊織江の両人を何うかして手に入れんけりゃアならんが、これ/\と
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