覚えるように相成りたいで」
梅「いや伯父に宜《よ》く然《そ》う云いましょう、秋月に宜く云えば心配有りません、屹度《きっと》伯父に話をします、貴公の心掛けを誠に感心したから」
大「それは千万|辱《かたじ》けない、其のお言葉は決して反故《ほご》には相成りますまい」
梅「武士に二言はありません」
大「へえ辱けない」
 春部梅三郎は真っ赤に成って、彼《か》の文を懐に入れ其の儘表へ駈出すを送り出し、広小路の方へ行《ゆ》く後姿《うしろすがた》を見送って、にやりと苦笑いをしたは、松蔭大藏という奴、余程横着者でございます。扨《さて》其の歳の暮に春部梅三郎が何ういう執成《とりな》しを致しましたか、伯父秋月へ話し込むと、秋月が渡邊織江の処へまいりまして相談致すと、素《もと》より推挙致したのは渡邊でございますが、自分は飛鳥山で大藏に恩になって居りますから、片贔屓《かたびいき》になるようで却《かえ》って当人のためにならんからと云って、扣《ひか》え目にして居りますと、秋月の引立で御前体《ごぜんてい》へ執成《とりな》しを致しましたから、急に其の暮松蔭大藏は五十石取になり、御近習《ごきんじゅう》お小納戸《こなんど》
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