此の廉を以てお執成《とりなし》を願います」
梅「むゝ、何ういう理由《わけ》で、人は誰だね」
大「えゝ疾《とう》より此の密書が拙者の手に入って居りますが、余人《よじん》に見せては相成らんと、貴方の御心中を看破《みやぶ》って申し上げます、どうか罪に陥らんようにお取計いを願いとうござる」
梅「何だ、密書と云えば容易ならん事だ」
と手に取って見て驚きましたも道理で、いつぞや若江から自分へ贈った艶書であるから、かっと赤面致しましたが、色の白い人が赧《あか》くなったので、そりアどうも牡丹《ぼたん》へ電灯を映《か》けたように、どうも美しい好《い》い男で、暫く下を向いて何も云えません。大藏少し膝を進ませまして、
大「是は私《わたくし》の功かと存じます、此の功によってお引立を願いとう存じます、只出世を致したいばかりではないが、拙者|前《ぜん》に津山に於《おい》て親父は二百四十石|領《と》りました、松蔭大之進の家に生れた侍の胤《たね》、唯今ではお目見得|已上《いじょう》と申しても、お通り掛けお目見えで、拙者|方《かた》では尊顔を見上ぐる事も出来ませんから、折々お側へ罷出《まかりい》でお目通りをし尊顔を見
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