ではありましょうけれども、なに気を附けたら其様な事は有りますまい、私《わたくし》も宜く神信心《かみしん/″\》をして丁寧に取扱えば、毀れるような事はありますまいと存じますからねお母さま、私は一生懸命になりまして奉公を仕遂《しおお》せ[#「仕遂せ」は底本では「仕逐せ」]、其の中《うち》あなたの御病気が御全快になれば、私が帰って来て、御一緒に内職でもいたせば誠に好《よ》い都合じゃアございませんか、何卒《どうぞ》遣って下さいまし、ねえお母さま、あなた私の身をお厭《いと》いなすって、あなたに万一《もしも》の事でも有りますと、矢張《やっぱ》り私が仕様がないじゃア有りませんか」
母「はい、有難うだけれども遣れません、亡《なくな》ったお父《とっ》さんのお位牌に対して、私の病を癒そうためにお前を其様な恐ろしい処へ奉公に遣って済むものじゃアない、のう丹治」
丹「へえ、あんたの云う事も道理でごぜえます、これは遣れませんな」
千「だけども爺や、お母さんの御病気の癒らないのを見す/\知って、安閑として居られる訳のものではないから、私は奉公に往《ゆ》き仮令《たとえ》粗相で皿を一枚毀した処が、小指一本切られたって
前へ 次へ
全470ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング