家中の評も宜しいが、何ぞ功がなければ出世は出来ん、其の功と云うは他《ひと》に勝《すぐ》れた事があるとか、或《あるい》は屋敷に狼藉でも忍入《しのびい》った時に取押えたとか何かなければ迚《とて》もいかんが、如何に伯父甥の間柄でも、伯父に頼んで無理にあゝしてくれ、斯うしてくれと云っては依怙《えこ》の沙汰になって、それでは伯父も済まん訳だから、然《そ》ういう事で私《わし》を此処《これ》へ呼び寄せて、お前が馳走をして引立《ひきたて》を願うと云って、酒などを飲ましてくれちゃ誠に困る、斯様な事が伯父に知れると叱られますから御免……」
と云い棄てゝ立上る袖を押えて、
大「暫くお待ちを……此の身の出世ばかりでなく、斯《か》く申す大藏も聊《いさゝ》かお屋敷へ対して功がござる、それゆえ強《し》いて願いますわけで」
梅「功が有れば宜しい、何ういう功だ」
大「愚昧《ぐまい》の者にて何事も分りませんが、お屋敷の御家風は何ういう事でござろうか、罪の軽重《けいじゅう》を心得ませんが、先ず御家中内に罪あるものがござります時に、重き罪を軽く計らう方が宜しいか、罪は罪だから其の悪事だけの罪に罰するが宜しいか、私《わたくし
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