お屋敷の御家風に就て伺いたい儀がござる、それと申すも拙者は何事も御家風を心得ません不慣《ふなれ》の身の上にて、斯様な役向《やくむき》を仰付けられ、身に余りて辱《かたじ》けない事と存じながら、慾には限りのないもので、何《ど》の様にも拙者身体の続くだけは御奉公致します了簡なれども、上役のお引立が無ければ迚《とて》も新参者《しんざんもの》などは出世が出来ません、渡邊殿は別段御贔屓を下さいますが、貴方の伯父御さまの秋月さまは未だ染々《しみ/″\》お言葉を戴きました事もないゆえ、大藏|疾《とう》より心懸けて居りますが、手蔓はなし、拠《よんどころ》なく今日《こんにち》迄打過ぎましたが、春部様からお声がゝりを願い、秋月様へお目通りを願いまして、お上《かみ》へ宜しくお執成《とりなし》を願いますれば拙者も慾ばかりではござらん、先祖へ対して此の上ない孝道かと存じますで、どうぞ伯父上へ貴方様から宜しく御推挙を願いたい」
梅「いや、それはお前無理だ、よく考えて見なさいお前は何か腕前が善《よ》いとか文道《ぶんどう》にも達して居《お》るとか、又品格といい応対といい、立派な侍の胤《たね》だけあって流石《さすが》だと
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