のお女中方が附いて来るが、是は上屋敷の女中かしらん、はてな何うして出たろう、此の掟の厳しいのに、今日《こんにち》のお客来で御蔵《おくら》から道具を出入《だしい》れするお掃除番が、粗忽《そこつ》で此の締りを開けて置いたかしらん、何にしろ怪《け》しからん事だと、段々側へ来て見ますと、塀外《へいそと》に今の男が立って居りますからハヽア、さてはお側近く勤むる侍と奥を勤めるお女中と密通をいたして居《お》るのではないかと存じましたから、後《あと》へ退《さが》って息を屏《ころ》して、密《そっ》と見て居りますと、彼《か》の女は四辺《あたり》をきょろ/\見廻しまして声を潜め、
女「春部《はるべ》さま、春部さま」
春「シッ/\、声を出してはなりません」
 と制しました。

        十六

 お小姓姿の美しい者が眼に涙を浮《うか》めまして、
女「貴方まア私《わたくし》から幾許《いくら》お文《ふみ》を上げましても一度もお返辞のないのはあんまりだと存じます、貴方はもう亀井戸《かめいど》の事をお忘れ遊ばしたか、私はそればっかり存じて居りますけれども、掟が厳しいのでお目通りを致すことも出来ませんでしたが、今
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