りは立派な大名の御家来で立派なお方が貧乏して困って苦労した人だから、物が届いている、感心な事だ、夜《よ》は寒いから止せ/\と御自分ばかりで見廻りをして勤めに怠りはない、それから見ると此方等《こちとら》は寝たがってばかりいて扨《さ》て仕様がないの」
甲「本当にどうも……おゝ噂をすれば影とやらで、おいでなすった」
と仲間共《ちゅうげんども》は大藏を見まして、
「えゝどうもお寒うございます」
大「あゝ大きに御苦労だが、又廻りの刻限が来たから往ってもらわなければならん、昼間お客来《きゃくらい》で又《ま》た遺失物《おとしもの》でもあるといかんから、仁助《にすけ》私《わし》が一人で見廻ろう、雪がちらちらと来たようだから」
仁「成程降って来ましたね」
大「よほど降って来たな、提灯《ちょうちん》も別に要《い》るまい、廻りさえすれば宜《よ》いのだ、私《わし》は新役だからこれが務《つと》めで、貴様達は私に連れられる身の上だ、殊《こと》に一人や二人狼藉者が出ても取って押えるだけの力はある、といって何も誇るわけではないが、此の雪の降るに、連れて往《い》かれるのも迷惑だろうから」
仁「面目次第もありませんが、
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