と》に人を感心させるのが得意でございますから、家中《かちゅう》一般の評判が宜しく、
甲「流石《さすが》は渡邊|氏《うじ》の見立《みたて》だ、あれは拾俵では安い、百石がものはあるよ」
乙「いゝえ何《なん》でげす、家老や用人よりは中々腕前が良いそうだが、全体|彼《あれ》を家老にしたら宜かろう」
 などと種々《いろ/\》なことを云います。大藏は素《もと》より気が利いて居りますから、雨でも降るとか雪でも降ります時には、部屋へ来まして
大「一盃《いっぱい》飲むが宜《よ》い、今日《こんにち》は雪が降って寒いから巡検《おまわり》は私《わし》一人で廻ろう、なに槍持ばかりで宜しい、此の雪では誰も通るまいから咎める者も無かろう、私一人で宜しい、これで一盃飲んでくれ」
 と金《かね》びらを切りまして、誠に手当が届くから、寄ると触ると大藏の評判で、
甲「野上《のがみ》イ」
乙「えゝ」
甲「今度新規お抱えになった松蔭様はえらいお方だね」
乙「彼《あれ》は別だね一寸《ちょっと》来ても寒かろう、一盃飲んだら宜かろうと、仮令《たとえ》二百でも三百でも銭を投出して目鼻の明く処は、どうも苦労した人は違うな、一体御当家様よ
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