伏をする、というのでお目見えというから読んで字の如く目で見るのかと存じますと、足音を聞くばかり、寧《むし》ろお足音拝聴と申す方が適当であるかと存じます。併《しか》し当時《そのころ》では是すら容易に出来ませんことで、先ず滞《とゞこお》りなくお目見えも済み、是から重役の宅を廻勤《かいきん》いたすことで、是等《これら》は総《すべ》て渡邊織江の指図でございますが、羽振の宜《よ》い渡邊織江の引力でございますから、自《おのず》から人の用いも宜しゅうございますが、新参のことで、谷中のお下屋敷詰《しもやしきづめ》を申付けられました。始《はじま》りはお屋敷|外《そと》を槍持六尺棒持を連れて見廻らんければなりません、槍持は仲間部屋《ちゅうげんべや》から出ます、棒持の方は足軽部屋から出《で》て[#「出《で》て」は底本では「出《で》で」]、甃石《いし》の処をとん/\とん/\敲《たゝ》いて歩《あ》るく、余り宜《い》い役ではありません、芝居で演じましても上等役者は致しません所の役で、それでも拾俵の高持《たかもち》になりました。所が大藏如才ない人で、品格があって弁舌愛敬がありまして、一寸《ちょっと》いう一言《ひとこ
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