つ時に虎の門のお上屋敷《かみやしき》へまいりますと、御門番には予《かね》て其の筋から通知がしてありますから、大藏を中の口へ通し中の口から書院へ通しました。
十五
御書院の正面には家老寺嶋兵庫、お留守居渡邊織江其の外お目附列座で新規お抱えのことを言渡し、拾俵五人扶持を下《くだ》し置かるゝ旨のお書付を渡されました。其のお書付には高《たか》拾俵五人扶持と筆太に書いて、宛名は隅の方へ小さく記してござります。織江から来《きた》る十五日御登城の節お通り掛けお目見え仰付《おおせつ》けらるゝ旨、且《かつ》上屋敷に於てお長家《ながや》を下し置かるゝ旨をも併《あわ》せて達しましたので、大藏は有難きよしのお受《うけ》をして拝領の長家へ下《さが》りました。織江が飛鳥山で世話になった恩返しの心で、御不自由だろうから是もお持ちなさい、彼《あれ》もお持ちなさいと種々《いろ/\》な品物を送ってくれたので、大藏は有難く心得て居りました。其の中《うち》十五日がまいると、朝五つ時の御登城で、其の日大藏は麻上下《あさがみしも》でお廊下に控えていると、軈《やが》てごそり/\と申す麻上下と足の音がいたす、平
前へ
次へ
全470ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング