、聊《いさゝ》か高も取りました者でござるが、父に少し届かん所がありまして、お暇《いとま》になりまして、暫《しばら》くの間|黒戸《くろと》の方へまいって居り又は權六の居りました村方にも居りました、それゆえに彼《あれ》とは知る仲でございます」
織「実にどうも貴方は惜《おし》いことで、大概忠臣二君に事《つか》えずと云う堅い御気象であらっしゃるから、立派な処から抱えられても、再び主《しゅう》は持たんというところの御決心でござるか」
大「いえ/\二君に仕《つか》えんなどと申すは立派な武士の申すことで、どうか斯うやって店借《たながり》を致して、売卜者《ばいぼくしゃ》で生涯|朽果《くちはて》るも心外なことで、仮令《たとえ》何様《どん》な下役小禄でも主取《しゅうと》りをして家名を立てたい心懸《こゝろがけ》もござりますが、これという知己《しるべ》もなく、手蔓等《てづるとう》もないことで、先達《せんだっ》て權六に会いまして、これ/\だと承わり、お前は羨《うらやま》しい事で、遠山の苗字を継いでもと米搗《こめつき》をしていた身の上の者が大禄《たいろく》を取るようになったも、全くお前の心懸《こゝろがけ》が良いの
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