れば宜かったが、急いで飲《や》っつけたで、えら腹が空《へ》ったから、二合出たのを皆《み》な酌飲《くんの》んじまい、酔ぱらいになって、つい身体が横になったところから不調法をして、旦那様に御迷惑をかけましたが、先生さまのお蔭さまで助かりましたは、何ともお礼の申上げようはござえません」
織「えゝ今日《こんにち》は直《すぐ》にお暇《いとま》を」
大「何はなくとも折角の御入来《ごじゅうらい》、素《もと》より斯様な茅屋《ぼうおく》なれば別に差上《さしあげ》るようなお下物《さかな》もありませんが、一寸《ちょっと》詰らん支度を申し付けて置きましたから、一口上ってお帰りを」
織「いや思召《おぼしめし》は辱《かたじ》けないが、今日《こんにち》は少々急ぎますから、併《しか》し貴方様はお品格といい、先達《せんだっ》て三人を相手になすったお腕前は余程武芸の道もお心懸け、御熟練と御無礼ながら存じました、どうか承わりますれば新規お抱えに相成った權六と申す者と前々から知るお間柄ということを一寸屋敷で聞きましたが、御生国《ごしょうこく》は矢張《やはり》美作で」
大「はい、手前は津山の越後守家来で、父は松蔭大之進と申して
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