様な御心配を戴く理由《わけ》もなし、お辞《ことば》のお礼で十分、どうか品物の所は御免を蒙《こうむ》りとう、思召《おぼしめし》だけ頂戴致す」
織「いえ、それは貴方の御気象、誠に御無礼な次第ではあるけれども、ほんのお礼のしるしまでゞございますから、どうかお受け下さるように……甚《はなは》だ何《なん》でござるが御意《ぎょい》に適《かな》った色にでもお染めなすって、お召し下されば有難いことで、甚だ御無礼ではござるが……」
大「何《なん》ともどうも恐入りました訳でござる然《しか》らば折角の思召《おぼしめし》ゆえ此の羽二重だけは頂戴致しますが、只今の身の上では斯様な結構な品を購《と》るわけには迚《とて》もまいりません、併《しか》し此のお肴料《さかなりょう》とお記《しる》しの包は戴く訳にはまいりません」
織「左様でもござろうが、貴方が何《なん》でございますなら御奉公人にでもお遣《つか》わしなすって下さるように」
大「それは誠に恐入ります、嬢さま誠に何とも……」
竹「いえ親共と早くお礼に上《あが》りたいと申し暮し、私《わたくし》も種々《いろ/\》心ならず居りましたが、何分にも番がせわしく、それ故大きに
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