織「先ず御機嫌宜しゅう、えゝ過日は図らずも飛鳥山で何とも御迷惑をかけ、彼《あ》の折《おり》はあゝいう場所でござって、碌々お礼も申上げることが出来んで、屋敷へ帰っても此娘《これ》が又どうか早うお礼に出たいと申しまして、実に容易ならん御恩で、実に辱《かたじ》けない事で、彼の折は主名を明すことも出来ず、怖い事も恐ろしい事もござらんが、女連《おんなづれ》ゆえ大きに心配いたし居りました、実に其の折は意外の御迷惑をかけまして誠に相済みません事で」
大「いえ/\何う致しまして、再度お礼では却《かえ》って恐入ります、殊《こと》に御親子《ごしんし》お揃いで斯様な処へおいでは何とも痛入《いたみい》りましてござる」
織「えゝ此品《これ》は(と盆へ載せた品を前へ出し)[#「)」は底本では脱落]何《なん》ぞと存じましたが、御案内の通りで、下屋敷《しもやしき》から是までまいる間には何か調《とゝの》えます処もなく、殊に番退《ばんひ》けから間《ま》を見て抜けて参りましたことで、広小路へでも出たら何ぞ有りましょうが、是は誠にほんの到来物で、粗末ではござるが、どうか御受納下さらば……」
大「いや是は恐入ったことで……斯
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