《いず》れ御尊宅へお礼に出ます」
と宿所《しゅくしょ》姓名を書付けて別れて帰ったのが縁となり、渡邊織江方へ松蔭大藏が入込《いりこ》み、遂に粂野美作守様へ取入って、どうか侍に成りたい念があって企《たく》んで致した罠にかゝり、渡邊織江の大難に成ります所のお話でございます。此の松蔭大藏と申す者は前に述べました通り、従前美作国津山の御城主松平越後様の家来で、宜《よ》い役柄を勤めた人の子でありますが、浪人して図らず江戸表へ出てまいりましたが、彼《か》の權六とも馴染の事でございますゆえ、權六方へも再三訪れ、權六もまた大藏方へまいりまして、大藏は織江を存じておりますから喧嘩の仲裁《なか》へ入りました事でございます。屋敷へ帰っても物堅い渡邊織江ですから早く礼に往《ゆ》かんければ気が済みませんので、お竹と喜六を伴《つ》れ、結構な進物を携《たずさ》えまして日暮ヶ岡へまいって見ると、売卜《ばいぼく》の看板が出て居りますから、
織「あ此家《これ》だ、喜六|一寸《ちょっと》其の玄関口で訪れて、松蔭大藏様というのは此方《こなた》かと云って伺ってみろ」
喜「はい畏《かしこま》りました、えゝお頼み申します/\」
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