まさか》家来渡邊織江と申す者、今日《こんにち》仏参《ぶっさん》の帰途《かえりみち》、是なる娘が飛鳥山の花を見たいと申すので連れまいり、図らず貴殿の御助力《ごじょりき》を得て無事に相納まり、何ともお礼の申上げようもござりません、併《しか》しどうも起倒流《きとうりゅう》のお腕前お立派な事で感服いたしました、いずれ由《よし》あるお方と心得ます、御尊名をどうか」
浪「手前《てまい》は名もなき浪人でございます、いえ恐入ります、左様でございますか、実は拙者は松蔭大藏と申して、根岸の日暮が岡の脇の、乞食坂を下《お》りまして左へ折れた処に、見る蔭もない茅屋《ぼうおく》に佗住居《わびずまい》を致して居ります、此の後《ご》とも幾久しく……」
織「左様で、あゝ惜しいお方さまで、只今のお身の上は」
大「誠に恥入りました儀でござるが、浪人の生計《たつき》致し方なく売卜《ばいぼく》を致して居ります」
織「売卜を……易を……成程惜しい事で」
喜「お前さまは売卜者《うらないしゃ》か、どうもえらいもんだね、売卜者《ばいぼくしゃ》だから負けるか負けねえかを占《み》て置いて掛るから大丈夫だ、誠に有難うござえました」
織「何
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