上って尋常に華々しく」
甲「いえ/\誠に恐入りました、酔《よい》に乗じ甚《はなは》だ詰らん事を申して、お気に障ったら幾重にもお詫《わび》を致します、どうか御勘弁を願います」
喜「今度は詫るか、詫るというなら堪忍してやるが、弱え奴だな、己《おら》ような年い老《と》った弱えもんだと馬鹿にして、三つも四つも殴りアがって、斯う云う旦那に捉《つか》まると魂消《たまげ》てやアがる、我身を捻《つね》って他人《ひと》の痛さが分るだろう、初まりの二つは我慢が出来なかったぞ、己も殴るから然《そ》う思え」
と握拳を固めてこん/\と続けて二つ打つ。
甲「誠に先程は御無礼で」
と這々《ほう/\》の体《てい》で逃げて行《ゆ》くと、弥次馬に追掛《おっか》けられて又打たれる、意気地《いくじ》のない事。
織「どうか一寸《ちょっと》旧《もと》の席へ、まア/\何卒《どうぞ》…」
浪「いえ、些《ちっ》と取急ぎますから」
織「でもござろうが」
と無理に旧《もと》の茶屋へ連戻り、上座《じょうざ》へ直し、慇懃《いんぎん》に両手を突き、
織「斯《か》ようの中ゆえ拙者の姓名等も申上げず、恐入りましたが、拙者は粂野美作守《くめのみ
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