ったって旨いものでは有りません。
甲「うゝーん」
 と倒れた、詰らんものを食ったので、見物の弥次馬が、
△「其方《そっち》へ二人逃げた、威張った野郎の癖に容《ざま》ア見やアがれ、殴れ/\」
 と何だか知りもしないのに無茶苦茶に草履《ぞうり》草鞋《わらじ》を投付ける。
織「これ喜六、よくお礼を申せ」
喜「へえ、誠に有難《ありがて》えことで、初《はじま》りは心配して居りました、若《も》し貴方に怪我でもあらば仕様がねえから飛出そうと思ってやしたが、此の通りおっ死《ち》ぬまで威張りアがって野郎」
 二つ三つ打つを押止《おしと》め、
浪「いや打ったって致し方がありません罪も報いもない此奴《こやつ》を殺しても仕様がないから、御家来|憚《はゞか》りだが彼方《あっち》で手桶を借り水を汲んで来て下さい」
喜「はい畏《かしこ》まりました」
 彼《か》の侍は其処《そこ》に倒れた浪人の双方の脇の下へ手を入れ、脇肋《きょうろく》へ一活《いっかつ》入れる。
甲「あっ……」
 と息を吹反《ふきかえ》す処へ水を打掛《ぶっか》ける。
甲「あっ/\/\……」
浪「其様《そん》な弱い事じゃアいけません、果合いをなさるなら立
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