ならん、篦棒《べらぼう》め」
と侍の面部へ唾を吐掛《はきか》けました。
十三
斯うなると幾ら柔和でも腹が立ちます、唾を吐き掛けられた時には物も云わず半手拭《はんてぬぐい》を出して顔を拭く内に、眼がきりゝと吊し上りました。相手の三人は酔っているから気が附きませんが、傍の人は直《じき》気が附きまして、
○「安《やす》さん出掛けよう、斯《こ》んな処で酒を呑んでも身になりませんよ、彼《あ》の位妹が出て謝って、御主人が塩梅《あんばい》の悪いのに出て来て詫びているのに、酷《ひど》い事をするじゃアないか、汁を打掛《ぶっか》けたばかりで誰でも大概|怒《おこ》っちまう、我慢してえるが今に始まるよ、怪我でも仕ねえ中《うち》に出掛けよう、他に逃げ処がないから往《い》こう/\」
△「折《おり》を然《そ》う云ったっけが間に合わねえから、此の玉子焼に鰆《さわら》の照焼は紙を敷いて、手拭に包み、猪口《ちょこ》を二つばかり瞞《ごま》かして往《ゆ》こう」
と皆|逃支度《にげじたく》をいたします。此方《こちら》の浪人は屹度《きっと》身を構えまして、
浪「いよ/\御勘弁|相成《あいなら》んとあれば
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