かえ》って御立腹を増すばかり、手前少々腹痛が致しまして、横になって居りまする内に、妹が罷《まか》り出て重々恐入りますが、何卒《なにとぞ》御勘弁を願います」
甲「むゝ、尊公は先刻《さっき》此の方の吸物椀の中へ雪踏を投込んだ奴の御主人かえ」
浪「左様家来の粗相は主人が届かんゆえで有りますから、手前成り代ってお詫を致します、どうか御勘弁を願います、此《かく》の如く両手を突いてお詫を……」
甲「此奴《こいつ》かえ/\」
乙「此者《これ》じゃアなえよ、其奴《そいつ》は前《さき》に昇《あが》っていた奴だ、もっと年を老《と》ってる奴だア、此奴は彼《あ》の娘へ※[#「言+滔のつくり」、第4水準2−88−72]諛《おべっか》に入って来たんだ、其様《そん》な奴をなじらなくっちゃア仕様がねえ、えゝ始めて御意得ます、御尊名を承わりたいね……手前は谷山藤十郎《たにやまとうじゅうろう》と申す至って武骨なのんだくれで、御家来の不調法にもせよ、主人が成代って詫をいたせば勘弁いたさんでもないが、斯《かく》の如く泥だらけになった物が喰えますかよ、此の汁が吸えるかえ」
と半分残っていた吸物椀を打掛《ぶっか》けましたから、
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