だな。伝「飲《のみ》やアしねえ、今日《けふ》は治衛門《ぢゑもん》さんのところへ行《い》つても酒《さけ》は飲《の》まなかつた、家《うち》に買つてあるのを知つてゐるから。女「それでも酒《さけ》くさいよ。伝「燗鍋《かんなべ》に玉子酒《たまござけ》があつたからそれを飲《の》んだ。女「エツ、玉子酒《たまござけ》を飲《の》んだの……しやうがねえな、これはいけねえんだよ、お前《まへ》が拵《こし》らへた痳痺薬《しびれぐすり》が入《はい》つてゐるんだよ。伝「ウム、おくまてめえは己《おれ》を殺す了簡《れうけん》か。熊「何《なに》を云《い》ふんだな、さつき身延山《みのぶさん》へお参《まゐ》りに来《き》た人が道に迷つて此処《こゝ》に来《き》たが、それは吉原《よしはら》にゐた時に出た客なんだよ、三|両《りやう》包《つゝ》んで出したが跡《あと》に切餅《きりもち》(二十五|両《りやう》包《づゝみ》)二|俵《へう》位《ぐらゐ》はある様子《やうす》、それで玉子酒《たまござけ》に仕掛《しかけ》をして飲《の》ましたが、その残《のこり》をお前《まへ》が飲《の》んだのさ。これを次《つぎ》の間《ま》で聞いた客は驚《おどろ》いて逃
前へ 次へ
全15ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング