。女「さうですよ、江戸《えど》で生《うま》れたんですよ。○「江戸《えど》は何《ど》の辺《へん》でございますか。女「生《うま》れは日本橋《にほんばし》の近所ですが観音様《くわんおんさま》のうしろに長い間ゐたことがありますよ。○「へえ観音様《くわんおんさま》のうしろに……あなたは吉原《よしはら》の熊蔵丸屋《くまざうまるや》の月の戸《と》華魁《おいらん》ぢやアございませんか。女「おや何《ど》うしてわたしを御存知《ごぞんぢ》です。男「華魁《おいらん》ですかどうもまことにお見受《みう》け申《まう》したお方《かた》だと存《ぞん》じましたが、只今《たゞいま》はお一人ですか。女「いえ配偶者《つれあひ》があるんですよ。男「左様《さやう》でございますか、私《わたし》は久《ひさ》しい以前《いぜん》二の酉《とり》の時に一人《ひとり》伴《つれ》があつて丸屋《まるや》に上《あが》り、あなたが出て下《くだ》すつて親切にして下《くだ》すつた、翌年《よくねん》のやはり二の酉《とり》の時に久《ひさ》し振《ぶ》りで丸屋《まるや》へ上《あが》ると、あなたは情死《しんぢゆう》なすつたと云《い》ふことで、あゝ飛んだことをした、い
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