ん。○「何《ど》ういたしましてお蔭様《かげさま》で助かりましてございます。女「そこに木《き》の葉《は》がありますよ、焚付《たきつけ》がありますから。囲炉裡《ゐろり》の中《なか》に枯木《かれき》を入《い》れフーツと吹《ふ》くとどつと燃《も》え上《あが》りました。その火の光りでこゝに居《を》ります女を見ると、年頃《としごろ》は三十二三|服装《なり》は茶弁慶《ちやべんけい》の上田《うへだ》の薄《うす》い褞袍《どてら》を被《き》て居《を》りまして、頭髪《つむり》は結髪《むすびがみ》でございまして、目《め》もとに愛嬌《あいけう》のある仇《あだ》めいた女ですが、何《ど》うしたことか咽喉《のど》から頬《ほゝ》へかけて突《つ》いた様《やう》な傷《きず》がございます。女「そこへ草鞋《わらぢ》を踏込《ふみこ》んでお当《あた》んなさいまし。○「有難《ありがた》うございます……お内儀《かみ》さんえ、間違《まちが》つたら御免《ごめん》なすつて下さいまし、人違《ひとちが》ひと云《い》ふことはございますから、あなたはお言葉の御様子《ごやうす》では此《こ》の鰍沢《かじかざは》のお生《うま》れではないやうでございますな
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