うざし》をさして逃《に》げ出しました。女「野郎《やらう》気《き》がついたな、鉄砲《てつぱう》で射殺《ぶちころ》してしまふ。これを聞いていよ/\驚《おどろ》き雪《ゆき》の中《なか》を逃《に》げたがあとからおくまは火縄筒《ひなはづゝ》を持つて追つて来ます。旅の人はうしろをふり向くとチラ/\火が見える。前《まへ》は東海道《とうかいだう》岩淵《いはぶち》へ落《おと》す急流《きふりう》、しかもこゝは釜《かま》が淵《ふち》と申《まう》す難所《なんじよ》でございます。お祖師《そし》が身延《みのぶ》へ参詣《さんけい》に来《き》ても鰍沢《かじかざは》の舟には乗るなとおつしやつた、しかしこゝより外《ほか》に遁《のが》れるところはない鉄砲《てつぱう》で射《ぶ》ち殺されるかそれとも助かるか一かばちか○「南無妙法蓮華経《なむめうほふれんげきやう》」とお題目《だいもく》をとなへながら流れをのぞんで飛び込みました。下につないであつた山筏《やまいかだ》の上へ落ちると、佩《さ》してゐた道中差《だうちゆうざし》がスルリと鞘走《さやばし》つて、それが筏《いかだ》を繋《もや》つた綱《つな》にふれるとプツリと切れて筏《いかだ》
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