《ずる》い奴《やつ》だから、そんなものはお預《あづか》り申《まう》した覚《おぼ》えはござりませぬ、大旦那様《おほだんなさま》お亡《かく》れの時お遺言《ゆゐごん》もございませぬから上《あげ》る事は出来《でき》ない、一|体《たい》お前《まへ》さんは何《なに》を証拠《しようこ》に預《あづ》けたと云《い》ひなさるか、預《あづ》けたものなら証拠《しようこ》が無《な》ければならない。といふ取《と》つても付《つ》けない挨拶《あいさつ》。其時分《そのじぶん》は人間が大様《おほやう》だから、金《かね》を預《あづ》ける通帳《かよひちやう》をこしらへて、一々《いち/\》附《つ》けては置いたが、その帳面《ちやうめん》は多助《たすけ》の方《はう》へ預《あづ》けた儘《まゝ》国《くに》へ帰《かへ》つたのを、番頭《ばんとう》がちよろまかしてしまつたから、何《なに》も証拠《しようこ》はない。さア其人《そのひと》は口惜《くや》しくつて耐《たま》らないから、預《あづ》けたに違《ちが》ひない、多助《たすけ》さんさへゐれば其様《そのやう》なことを云《い》ふ筈《はず》はないのだから、返《かへ》してくれ。と云《い》つても肯《き》か
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