つた》へて、今日《こんにち》お墓参《はかまゐ》りにまゐりました、これはほんの心ばかりでございますが、どうか先代多助《せんだいたすけ》の御囘向《ごゑかう》を願ひたいものでございます」と云《い》つて金《かね》を一|円《ゑん》包《つゝ》んで出すと、奥《おく》から和尚様《をしやうさま》が出て来《き》まして、「あなたが塩原多助《しほばらたすけ》の御縁類《ごえんるゐ》の方《かた》でございますか、愚僧《ぐそう》が当住《たうぢう》で……只今《たゞいま》御囘向《ごゑかう》を……」「いえ、今日《こんにち》は拠《よんどころ》ないことで急ぎますから、御囘向《ごゑかう》は後《あと》でなすつて下さい……塔婆《たふば》をお立てなすつて、どうぞ御囘向《ごゑかう》を願ひます」「畏《かしこま》りました」と茶を入れて金米糖《こんぺいたう》か何《なに》かを出します。すると和尚《をしやう》さんの手許《てもと》に長谷川町《はせがはちやう》の待合《まちあひ》の梅廼屋《うめのや》の団扇《うちは》が二|本《ほん》有《あ》りますから、はてな此寺《このてら》に梅廼屋《うめのや》の団扇《うちは》のあるのは何《ど》ういふ訳《わけ》か、殊《こと
前へ 次へ
全26ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング