ます、何卒《どうぞ》是《こ》れへ是《こ》れへ。弥「ハヽヽ狭《せま》つこい処《とこ》に這入《はい》つてるな……己《おら》ア手前《てめえ》に禁厭《まじなひ》を教《をし》へてやらうか。主人「ヘヽヽ御冗談《ごじようだん》ばかり……へえ成程《なるほど》……えゝ予々《かね/″\》天下有名《てんかいうめい》のお方《かた》で、大人《たいじん》で在《いら》つしやると云《い》ふ事《こと》は存《ぞん》じて居《を》りましたが、今日《けふ》は萬屋《よろづや》の家《うち》へ始《はじ》めて往《ゆ》くのだから、故意《わざ》と裏口《うらぐち》からお這入《はい》りになり、萱門《かやもん》を押破《おしやぶ》つて散々《さん/″\》に下草《したくさ》をお暴《あら》しになりました所《とこ》の御胆力《ごたんりき》、どうも誠に恐入《おそれい》りました事で、今日《こんにち》の御入来《ごじゆらい》は何《なん》とも何《ど》うも実《じつ》に有難《ありがた》い事《こと》で、大《おほ》きに身《み》の誉《ほま》れに相成《あひな》ります、何卒《どうぞ》速《すみや》かに此方《これ》へ/\。弥「私《わつち》アお前《めえ》にりん病《びやう》が起《おこ》つても直《ぢき》に療《なほ》る禁厭《まじなひ》を教《をし》へて遣《や》らう、縄《なは》を持つて来《き》な、直《ぢき》に療《なほ》らア。主人「はてな…へえゝ。弥「痳病《りんびやう》(尋常《じんじやう》)に縄《なわ》にかゝれと云《い》ふのだ。主人「えへゝゝ御冗談《ごじようだん》ばかり、おからかひは恐入《おそれい》ります、えゝ始めまして……(丁寧《ていねい》に辞儀《じぎ》をして)手前《てまへ》は当家《たうけ》の主人《あるじ》五左衛門《ござゑもん》と申《まう》す至《いた》つて武骨《ぶこつ》もので、何卒《どうか》一|度《ど》拝顔《はいがん》を得《え》たく心得《こゝろえ》居《を》りましたが、中々《なか/\》大人《たいじん》は知らん処《ところ》へ御来臨《ごらいりん》のない事は存《ぞん》じて居《を》りましたが、一|度《ど》にても先生の御入来《おいで》がないと朋友《ほういう》の前《まへ》も実《じつ》に外聞《ぐわいぶん》悪《わる》く思ひます所から、御無礼《ごぶれい》を顧《かへり》みず再度《さいど》書面《しよめん》を差上《さしあ》げましたが、お断《ことわ》りのみにて今日《けふ》も御入来《おいで》は有《あ》るま
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