》んで石燈籠《いしどうろう》を押倒《おしたふ》し、松《まつ》ヶ|枝《え》を折《を》るといふ騒《さわ》ぎで、先程《さきほど》から萬屋《よろづや》の主人《あるじ》は、四|畳《でふ》の囲《かこひ》へ這入《はい》り、伽羅《きやら》を焼《た》いて香《かう》を聞いて居《を》りました。弥吉《やきち》は方々《はう/″\》覗《のぞ》いたが誰《だれ》も居《ゐ》ません。ふと囲《かこひ》へ眼《め》を附《つ》け、弥「此《こ》ん中《なか》に人が居《ゐ》るだらう。と怪《け》しからん奴《やつ》で、指の先へ唾《つば》を附《つ》け、ぷつりと障子《しやうじ》へ穴を開《あ》け覗《のぞ》き見て、弥「いやア何《なに》か喰《く》つて居《ゐ》やアがる。主人「これ、誰《たれ》か来《き》たよ……誰《だれ》だ、其処《そこ》へ穴《あな》を開《あ》けたのは、怪《けし》からん人だな、張立《はりたて》の障子《しやうじ》へぽつ/\穴《あな》を開《あ》けて乱暴《らんばう》な真似《まね》をする、誰《だれ》だな、覗《のぞ》いちやアいかん、誰《だれ》だ。弥「ハヽヽ何《ど》うか怒《おこ》つてやアがる、えヘヽヽ御免《ごめん》なさい。主人「これは驚《おどろ》いた……誰《だれ》か来《こ》いよ、変《へん》な人が来《き》たから……其処《そこ》は這入《はい》る処《とこ》ぢやア有《あ》りません、づか/\這入《はい》つて来《き》ちやアいけません。弥「門《もん》を破《やぶ》つて這入《はい》つた。主人「おゝ/\乱暴狼藉《らんばうらうぜき》で、飛石《とびいし》なぞは狗《いぬ》の糞《くそ》だらけにして、青苔《あをごけ》を散々《さん/″\》に踏暴《ふみあら》し、折角《せつかく》宜《よ》い塩梅《あんばい》に苔《こけ》むした石燈籠《いしどうろう》を倒《たふ》し、松《まつ》ヶ|枝《え》を折《を》つちまひ、乱暴《らんばう》だね……何方《どちら》からお入来《いで》なすつた。弥「アハヽヽ驚《おどろ》いちまつたな……コヽ予々《かね/″\》お招《まね》きになりました半田屋《はんだや》の長兵衛《ちやうべゑ》で。主人「へえー是《これ》は驚《おどろ》き入《い》つた、左様《さやう》とは心得《こゝろえ》ず甚《はなは》だ御無礼《ごぶれい》の段々《だん/″\》何《なん》ともどうも、是《これ》は恐縮千萬《きようしゆくせんばん》……何卒《どうぞ》是《こ》れへ/\速《すみや》かにお通《とほ》りを願ひ
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