いと存《ぞん》じましたが、図《はか》らざる所《ところ》の御尊来《ごそんらい》、朋友《ほういう》の者《もの》に外聞《ぐわいぶん》旁《かた/″\》誠に有難《ありがた》い事で恐入《おそれい》ります……何《ど》うもお身装《みなり》の工合《ぐあひ》、お袴《はかま》の穿《はき》やうから更《さら》にお飾《かざ》りなさらん所と云《い》ひ、お履物《はきもの》がどうも不思議《ふしぎ》で、我々《われ/\》が紗綾縮緬《さやちりめん》羽二重《はぶたい》を着ますのは心恥《こゝろはづ》かしい事で、既《すで》に新《しん》五百|題《だい》にも有《あ》ります通《とほ》り「木綿《もめん》着《き》る男子《をのこ》のやうに奥《おく》ゆかしく見え」と実《じつ》に恐入《おそれい》ります、何卒《どうぞ》此方《こちら》へ/\。弥「お前《めえ》さんの処《とこ》から頼《たの》みが有《あ》つたので見に来《き》た。主人「それは誠に恐入《おそれい》ります。弥「手を揃《そろ》へてお辞儀《じぎ》をするんだが何《ど》うだい……此位《このくらゐ》で丁度《ちやうど》揃《そろ》つて居《ゐ》るか居《ゐ》ねえか見てくれ。主人「へゝゝゝ御冗談《ごじようだん》ばかり。弥「揚物《あげもの》が解《わか》るか、揚物《あげもの》てえと素人《しらうと》は天麩羅《てんぷら》だと思ふだらうが、長《なげ》えのを漸々《だん/″\》詰《つ》めたのを揚物《あげもの》てえのだ、それから早く掛物《かけもの》を出して見せなよ、破《やぶ》きアしねえからお見せなせえ、いんきんだむしの附着《くつゝ》いてる箱は川原崎《かはらさき》権《ごん》十|郎《らう》の書《か》いたてえ……えゝ辷《すべ》つて転《ころ》んだので忘れちまつた、醋吸《すすひ》の三|聖《せい》格子《かうし》に障子《しやうじ》に……簾《すだれ》アハヽヽヽ、おい何《ど》うした、確《しつ》かりしねえ。主人《あるじ》五左衛門《ござゑもん》は驚《おどろ》きまして太鼓張《たいこばり》のふすまを開《あ》けて、五「アツ。と口《くち》を開《あ》けたまゝ水屋《みづや》の方《はう》へ飛出《とびだ》しました。弥「おい……ハヽヽ彼方《あつち》へ逃《に》げて往《い》きやアがつた、馬鹿《ばか》な奴《やつ》だなア……先刻《さつき》むぐ/\喰《く》つてゐた粟饅頭《あはまんぢう》……ムンこゝに烟《けむ》の出《で》る饅頭《まんぢう》がある、喰《くひ》かけて
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