いえらい。」
と、頻《しき》りに画板を褒め立てますから、如何《どう》した事かと行《いっ》て見ますと、こわいかに、昨日まで四角であった画板わ、今朝《けさ》わ八角に成って、意気揚々と歩行《ある》いております。
 四角の角々を切り落せば、角の数が倍になって、八角に成るのわ当然《あたりまえ》、しかもそれわ自分の所業《しわざ》であるのに、そうとわ心付かぬ三角定木、驚いたの驚かないの!
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(三)ヒヤーこりゃ如何《どう》じゃ。アノ四角|奴《め》、一夜の中《うち》に八角に成りよった。この分でわまた明日わ、十角や二十角にも成るだろう、こりゃ所詮《しょせん》叶《かな》わぬわイ。
[#ここで字下げ終わり]
と、とうとう兜《かぶと》を脱いで降参しましたとわ、身のほど知らぬ大白痴《おおたわけ》。



底本:「日本児童文学名作集(上)」岩波文庫、岩波書店
   1994(平成6)年2月16日第1刷発行
底本の親本:「小波お伽百話」博文館
   1911(明治44)年1月初版発行
初出:「幼年雑誌」博文館
   1894(明治27)年10月号
※本作品は、作者が提唱した
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