三角と四角
巖谷小波

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)中《うち》に

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大方|諸君《みなさん》も

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(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
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 数学の中《うち》に幾何というものがある。幾何を学ぶにわ、是非とも定木《じょうぎ》が入る。その定木の中に、三角定木というのがある。――これわ大方|諸君《みなさん》も御存じでしょう。
 ところがこの三角定木、自分の体にわ、三方に尖《とが》った角のあるのを、大層自慢に致し、世間に品も多いが、乃公《おれ》ほど角のあるものわあるまい、角にかけてわ乃公が一番だと、たった三つよりない角を、酷《ひど》く鼻にかけておりました。
 すると或《あ》る日、同じ机の上にあった鉛筆が来ていうにわ、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(筆)三角さん三角さん、お前わ平常《ふだん》から大層その角を自慢しているし、私《わし》らもまたお前ほど角の多いものわないと思っていたが、この間来た画板《がばん》を見たかイ。あれわお前
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