て、宜しい、然らば日本の立場を書くと云ふので歸つて來まして、自分の友人として君が一番適任であるからそれを書かぬかと云ふことを私に勸めました。それが土臺となつて私が日本經濟史を書いたのであります。是は獨りルボンばかりではない。日本の事が分つて居るやうな學者でもどうして四五十年の間に斯うなつたかと云ふことに疑を抱いて居る。然し日本が四五十年の間に近世國家になつたと云ふことが抑々間違ひなのである。彼等は歐羅巴と交際する以前に日本は殆ど文明らしいものを持つて居らなかつたやうに思ふのです。それから色々の間違ひが起る。其ことに付てお話を申上げて見たいと思ひます。
何處の國でもあるのですが、西洋人は殊にひどいが、日本も亦其病は免かれぬ。國の歴史は其國だけの歴史であつて、世界共通のものがあつて何處の國でも世界史の一部分が其國の歴史であると云ふことを氣が附かない。日本の如きも日本は特別な國だと思つて居るが、皆世界の歴史の一部分であります。皆さん御承知の通り何處の國でも最初は奴隷を本として經濟を立てゝ居ります。奴隷と云ふのは勞働即ち勞働力です。其奴隷は隣の村へ行つて奪つて來る奴隷があり、戰爭で取る奴隷も
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