は無氣力であるから彼奴等は雨龍だと言つて笑つて僅かに鬱憤を漏した。雨龍と云ふのは、御承知の如く龍と言へば角があるが、雨龍は大きな恐しい蛇であるが角がないから、彼奴等は雨龍見たやうに、威張つても槍を立てることは出來ないぢやないかと言うて聊か冷笑して居つたが、冷笑して居る間に段々士は衰へて金を貸して呉れと言ひ、次には金を呉れと言ひ、終ひには強請ると云ふやうになつて來た。黄金のある所は勢力のある所でありまして、段々實力のある者は威張ると云ふことになつて來るのは、是は理の當然であります。
イギリスの如きは議會と云ふものは何で出來たかと言ふと、今日の如く自由投票普通選擧などと云ふものではなく大地主即ち大名です。イギリス王がフランスと戰爭をするのには金が要る。其大名大地主が税を掛けられる。税を掛けられるなら吾々は政治の發言權を持ちたいと云ふやうなことで、議會が權力を得た。日本も其通りもう士の武權が衰へて中産階級が黄金の權力を持つときには政治に發言するのは、勢ひの當然なんです。徳川幕府は伏見鳥羽の戰で負けましたから、薩長が之を倒したと言ふが、成程薩長は之を倒すのに功勞はあつたに相違ないが、併し薩長
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