つて來ると、船長――其船の船長であるけれども商人なんである、其船長から風聞書と云ふものを取る。お前はジヤバを經て來たらうが西洋にはどんな事があつたか聞かせろと言つて訊くが、彼等は「ナポレオンなる者生れ候由」と云ふやうなことを書いて唯一行か二行で世界の形勢を報告する。幕府の役人が之を見て世界の形勢は斯うだと思つて居る。豈圖らんや世界はさうではない、もうサイエンスの時代、機械の時代となつて居り、ナポレオンが出て來てまるで泥の中から大將を造るやうな事業をして居る。もう向ふでは封建制度を壞して、兵士と雖も大將になり得ると云ふ大變革をして居るのを知らないで居る。それで總ての制度は後れてしまつて居る。そこへ持つて來てペルリが來て國を開いた。吾々は三百年間のハンデキヤツプを持つて西洋と並んで立上つた。斯う云ふやうな状態である。それを四五十年の間に吾々が取戻して同等となつて更に手を伸すと云ふのである。ですから新日本は外國の文明で出來たのではない。是は日本人自力の力が刺戟によつて發達したのであります。それだけの力がなければ出來るものではない。今日八幡の製鐵所が世界有數の製鐵所であると云ふことは、大きな仕
前へ 次へ
全41ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
竹越 与三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング