流れて出るのを止めてしまつたのですから、非常な不自然である。長崎が其頃の外國貿易の港でありますが、オランダ人と商賣をして之を高く買つても、京都へ賣り江戸へ賣れば又儲かるのです。非常な利益がある。其非常な利益を誰が持つかと言ふと、江戸の商人が十何人、堺の商人が十何人、博多、長崎、大阪、京都、此大都會から五六十人の特權を持つた商人が、長崎から外國へ輸出する品物をマネーヂしてゐる。それだけが非常な利益を懷ろへ入れることになりますから、非常に不平が多い。茲に於てか長崎の役場では竈銀と云ふものを拵へた。非常な儲だからして竈を持つて居る者に此利益の何分かを分けてやる、即ち一軒の家を持つて居る者に利益を分けてやると云ふので、利益を皆長崎の港へ分けてやつた。それでないと餘り見つともなくて、徳川氏の干渉を恐れて、江戸、長崎、堺、博多の商人だけでは儲けきれないので、竈銀と云ふ名前を付けて其中から利益を配當すると云ふやうなことをしたが、斯く總て商賣が不自然になつて來た。そこで貨幣制度も外國貿易の取締も妙な工合になつて來て、さうして外國とは交通しないから西洋にどんな事があつても分らぬ。オランダの商人が、船に乘
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